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『いい夫婦の日』スペシャルミニ小説!

今日もやっぱり絶賛原稿中の我鳥でございますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

本日は11月22日、『いい夫婦の日』ということで!
ちょっくらネタが浮かんだので、ときめきミニ小説を書いてみました。
花蓮&陛下、鳴鳴&理央のお話です。
よろしければ読んでみてくださいませ~!happy01

 

 

 

shine ときめきは熱いささやきに浮かされて! shine

 

 ここは麗鋒国の京師、景遥。
 都の北に位置する宮城の一角、龍尾宮――いわゆる後宮には、皇帝陛下の寵愛篤い妃・淑花蓮が、今日もご機嫌にむふむふのほほんと暮らしている。
「おお、花蓮! 今日もぷりぷりに血色が良くて何よりだな。その桃色の頬を見ると、頬ずりしたくてたまらなくなるぞ」
 黙って立っていれば超一級品のヴィジュアルを誇る煌星皇帝・鋒天綸が、今日もご機嫌に後宮へ渡ってきて、にやけ顔で花蓮の頬に手を伸ばす。が、花蓮は顔をしかめて天綸の手を払った。
「陛下――。顔を出すなり開口一番、変態発言をかますのはやめてもらえますか」
「誰が変態だ! 寵妃の愛らしい顔を見て、愛でたくならない男がいるというなら、ここへ連れて来い! いや、ここは私の後宮だ。私とおまえの愛の巣だからな、どこの馬の骨ともわからぬ男など入れるわけにはゆかぬ。連れてくるなら別の場所だ。そうだ、書を捨て城市へ出よう。デートをしよう」
「何を訳のわからないこと言ってるんですか、もう……」
 ぶつぶつ文句を言いながらも、花蓮は天綸の膝の上に載せられてしまっている。それを見て、鳴鳴は反射的に箒に手を伸ばしそうになったが、
 ――あ、もう必要ないんだった。
 花蓮が先頃、名実共に天綸の『寵妃』になったのだという事実を思い出し、ぴくりと動いた右腕を左手で押さえる。
 お嬢様と陛下は夫婦になったんだから、いちゃいちゃしたっていいのよ。わたしが邪魔しちゃいけないのよ――。
 胸の中でそう自分に言い聞かせながらも、寂しい気持ちになって部屋を出てゆこうとした時――天綸の膝の上で花蓮が大きな声を上げた。
「えっ、宰相様が倒れた!?」
 それを聞き、鳴鳴も驚いて振り返る。
「本当ですか? あ、あの、宰相様、どうなさったんですか」
 口から出た声が、自分でもびっくりするくらいに震えていた。
 皇帝陛下の信頼厚い宰相・範理央は、紆余曲折あった上で鳴鳴の許婚となった男である。あの宰相様は、常に元気いっぱいというキャラクターではないが、かといって病気をしているところも見たことはない。倒れたなどと言われれば、何事かと思ってしまうのも当然だろう。
 鳴鳴が蒼ざめているのに気づき、天綸が言い訳するように頭を振った。
「いや、文字どおりバタンと倒れたわけではない。風邪をひいたようで、高熱を出していてな。仕事など休んでおとなしく邸で寝ていろと言い付けたのだ」
「なんだ……。陛下が面倒ばかりかけるものだから、過労で倒れちゃったのかと思いました」
 花蓮がほっとしたように言うのに、天綸が反論する。
「どういう意味だ! 私はあいつにそれほど面倒をかけてはいないぞ。あいつが勝手にあれこれ口うるさく言ってくるだけだ」
「口うるさく言われる時点で、面倒かけてるってことですよ。宰相様の心労を減らすためにも、少しはおとなしくしていたらどうですか」
「では、仕事もせず人にも会わず、ただおまえだけを愛でて暮らすか」
「それはおとなしいって言いません! 私、バカ殿な陛下は厭ですからっ」
 いつもの光景を見ながら、鳴鳴は落ち着かない気分になっていた。
「あ……あの……わたし、宰相様のお見舞いに行ってもいいでしょうか?」
 仲良く喧嘩している新婚夫婦の間に、思い切って割って入る。
「え?」
 我に返ったふたりがこちらを見た。花蓮が笑顔になってポンと手を打つ。
「もちろん、いいわよ。行ってあげなさいよ、鳴鳴。きっと宰相様も喜ぶわよ!」
「――そうだな。もしかしたら、面白いものが見られるかもしれぬぞ。ぜひ行ってこい」
 面白いもの――?
 天綸の思わせぶりな言い方が気になったが、とにかく理央が心配なので、寛容な皇帝夫妻のお言葉に甘え、堂々と後宮を抜け出す鳴鳴だった。

 

 そうして範家へ行ってみると、範夫人・紅菫花に熱烈歓迎された。
「あらあら鳴鳴ちゃん! 今日はどうしたの? え、理央を心配して来てくれたの? まあまあ、優しい子だこと!」
 菫花は鳴鳴を抱き寄せ、頬ずりをして言う。
「別に大したことはないのよ。ちょっと風邪をひいて熱を出しただけ。あの子が寝込むなんて滅多にないことなのだけれどね――でも、もしかしたら面白いものが見られるかもしれないから、早く行ってあげて」
「面白いもの、ですか?」
 天綸と同じことを言い、やはり同じように思わせぶりな表情をする菫花に首を傾げながら、鳴鳴は病床の理央を訪ねた。
「あの――お加減は如何ですか? お見舞いに来ました」
 静かに寝台の枕元へ歩み寄り、声をかけてから、鳴鳴ははっと息を呑んだ。
 思えば、いつもきっちり朝廷の高官然とした理央しか見たことがなかったのだ。立派な袍を脱ぎ、髪も解いて寝台に横たわる理央は、とても無防備に見えて、それなのに見ているととても胸がドキドキした。
「――ああ、おまえか。わざわざ来てくれたのか」
 理央は横になったまま顔をこちらに向けて言うと、怪訝そうに続けた。
「どうして離れてゆこうとしている?」
「え」
 無意識だった。足が勝手に後ずさりしていた。なんとなく、この場にいるのが怖いような気持ちになっていた。
「傍へ来い」
 呼ばれて近寄ると、伸びてきた腕に手首を掴まれて引き寄せられた。
「えっ――」
 体勢を崩し、面喰らう鳴鳴の耳元に理央がささやいた。
「おまえは可愛いな。私が怖いのか」
「っ!?」
 鳴鳴は大きく眸を見開いて理央を見た。
「どっどうしたんですか、そんな宰相様らしくない、陛下みたいな台詞――熱でもあるんですか!? ――って、そうですよね、熱があるんですよね」
 鳴鳴の手首を掴んでいる理央の手は熱い。
「もしかして、熱に浮かされたうわ言ですか? だったらちゃんと休んでいた方がいいです。すみません、具合の悪いところに押し掛けてしまって」
 頭を下げて謝り、やんわりと理央の手をほどこうとするのだが、離してくれない。
「宰相様……?」
「――鳴鳴、私のことは名で呼ぶのではなかったのか?」
「あ――はい、すみません。でも、あの……理央様……何か変……ですよ? どうなさったんですか」
 身を起こした理央は愉しげに鳴鳴の頭を撫で、頬を撫で、ついでに顎の下までくすぐる。
「あのっ、わたしは猫や蜥蜴じゃありませんけど……っ」
 果たしてこの理央が正気なのかどうなのか判じ兼ね、鳴鳴が困惑していると、
「理央、そこまでよ。鳴鳴ちゃんに風邪が感染ってしまったら大変でしょう」
 戸口から菫花の声が飛んできた(ずっと覗いていたのか!?)。
 理央の部屋から連れ出してくれたあと、菫花が教えてくれた。
「熱を出した時いつも、というわけではないのだけれどね――時々、ああなるのよ。一応あの子にも、蜥蜴以外のものを愛でる心があるのだとわかってほっとするわね。昔は典琅が愛でられていたのだけれど、これからは鳴鳴ちゃんが愛でられる番ね」
「はあ……。宰相様にはああいう一面が……」
 血は繋がらなくても、やはり天綸とは兄弟だということなのだろうか。
 ――つまり、これが陛下の言ってた『面白いもの』?
 面白いというより、びっくりしたというか、ただドキドキするだけだったけど――。

 

 心拍数が上がったまま後宮へ戻れば、相変わらず天綸が花蓮を力いっぱい愛でていた(自分が出かけてからもずっといちゃいちゃしていたのだろうか!?)。
「おまえは本当に可愛いなあ。世界一可愛いなあ。おまえが可愛くて、可愛すぎて、もう私はどうかしてしまいそうだぞ」
「もともと陛下はいつもどうかしてるじゃないですかっ。陛下が変なのを私のせいにしないでください! もうっ、龍臥殿の外でべたべたするのはやめてください~っ」
「では今すぐ龍臥殿へ行こう。心置きなくふたりきりでべたべたしようではないか」
 いつもどおりすぎるふたりの様子を見て、なんだか可笑しくなってしまった。
 自分と理央は、こんな風な夫婦にはなれないだろう。普段の理央は腹が立つほど無表情・無感動な男なのだから。
 でも、それでいいのだ。
 理央の甘いささやきは、熱を出した時だけのお楽しみ。今日はびっくりしてしまったけれど、彼にそういう癖があるのだとわかった以上、次の時はみっともなくうろたえたりしない。
 ――理央様、また熱を出さないかな。
 こっそり人の悪いことを思ってしまう鳴鳴だった。

〔おしまい〕

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