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むふむふの日2015!

6月2日になりました、むふむふの日です!happy01
今年もスペシャルミニ小説を書いてみました。

 
 

shine ときめきはうつろな夢の向こうに! shine

 

花蓮ちゃんと陛下の、新婚いちゃいちゃミニストーリーです。
下の『続きを読む』か、左のサイドメニューからどうぞ!
(あ、スマホからご覧の場合は、記事タイトルを選んだ時点で全部表示されてますね!)

 

また、本日午後からは、Twitterに麗鋒国宗室一家が登場する予定です!
Twitterアカウントをお持ちの方は、お気軽に話しかけてあげてくださいませ!happy01

 

 

 

 

shine ときめきはうつろな夢の向こうに! shine

 

 ここは麗鋒国の京師、景遥。
 都の北に位置する皇城は、若き皇帝陛下の仕事場である。
 夜明けと共に始まる朝議を終え、龍翔宮の私室へ戻った天綸は、ふと不思議な感覚に襲われて首を傾げた。
 ――はて。朝議を片づけたあとは、どこかへ行く用事があったような……。
 大急ぎで行かなければならない場所がある気がするのに、そこがどこなのか思い出せない。何の用で、誰に会うつもりなのかもわからない。
「……?」
 首を捻っているところに、信頼厚き宰相の範理央がやって来た。
「陛下。このあとは西域から来た使節を歓迎する宴があります。お支度を」
「あ? ――ああ」
 外交使節との宴? 自分はそんなものを楽しみにしていたのだろうか?
 しっくりこない気分を抱えたまま宴に出席し、日が暮れた頃にまた私室へ戻ると、今度は後宮の太監たちがやって来た。花蝶牌をずらりと並べて、好きな女を選べと言う。
「……今日は疲れている。退がれ」
 太監たちを追い返しながら、再び不思議な感覚が胸をよぎる。
 自分には、とても逢いたい娘がいる気がする。あんな板切れを選んでも逢えない娘。
 それは誰だ? どこにいる――?

 

 翌日の昼間、名ばかりの皇后・シィファの顔を見に後宮へ出かけた。
 シィファは、片言の麗鋒国語を喋る、幼い妹のような娘である。
 だが自分は、このメイリャン国の姫君の秘密を知っている気がする。彼女の傍に仕える、美しい侍女の秘密も。
 ――秘密? なんだ、それは?
 頭の中に、もやもやする部分がある。知っているはずなのに思い出せないものがそこに集まっている気がする。
 そして胸の中には、ぽっかりと穴が開いているような空しさがある。自分はそこに、何か熱い想いを抱えてはいなかっただろうか……?
 シィファの部屋を出て、そのまま真っすぐ龍翔宮へ帰る気になれなかった。
 なんとなく、足が梅花殿へ向かった。下級妃の暮らすそんな場所へなど行ったことはないはずなのに、まるで勝手知ったる我が家のように迷いなく廊下を進み、一番隅の角部屋に辿り着いた。
 狭い部屋を覗くと、数人の妃が集まってお喋りをしていた。天綸の姿に気づき、慌てて礼を執る女たちの顔を見て、なぜだかひどくがっかりした。
 ――なんだ? 私はここで、誰の顔を見たかったというのだ?
 憮然として踵を返す皇帝陛下を、女たちは不思議そうに見送った。

 

 御簾の後ろの皇太后に操られた朝議は毎日続く。後宮へはたまにシィファと遊んでやりに行く。太監たちが持ってくる花蝶牌の妃たちには興味が持てない。
 刺激のない退屈な日々。おかしい。こんなのはおかしい。自分はもっと、騒がしく忙しい日々を過ごしているはずではないのか――。
 蒼牙から城市の情報を得るため、久しぶりに城下へ出てみた。
 市の通りに団子屋の幟がはためいている。それが目に入った途端、咄嗟に脇を見遣って口を開いていた。
「団子だぞ、買ってゆくか? か――」
 ――『か』?
 自分は誰と一緒にいるつもりだったのだ? 誰の名を呼ぼうとした?
 どうも最近の自分は変だ。疲れているのだろうか? だが、疲れるほどの事件も起こらない、平和な日常の繰り返しなのだが――。
 皮肉げな気分になりながら蒼牙に会うと、なかなか刺激的な情報がもたらされた。鏡王朝の末裔やら西域のオルディアやらが陰謀を企んでいるらしい。しかしそれも、皇太后と相談しながら対策を練り、いずれも大きな騒ぎになる前に抑えることが出来た。
 ――違う。これらの事件は、もっとドタバタおかしな展開に寄り道をしながら解決するはずではなかったのか?
 自分が間違った世界に生きているような不思議な感覚が、日に日に強くなってゆく。
 片腕が寂しい。自分はここに、とても大切な何かを抱いているはずなのに――。

 

「――!」
 頭の中で、風船が弾けたような強い衝撃が起こり、天綸は目を覚ました。
 龍臥殿の寝所だった。
 腕の中にやわらかなぬくもりがある。
「うわぁ……そんな……顔より大きなお団子なんて~……やあん、困っちゃう、どうしよう~……」
 天綸の胸に頬を擦り寄せながら、呑気な寝言を漏らす娘。
「――花蓮」
 どうしてこの花蓮が傍にいない夢など見たのだろう。
 信じられない思いに、なんだか可笑しくなる。
「私の腕に抱かれていながら、団子の夢を見ているのか。まったくおまえという娘は……」
 小さく噴き出して笑いながら、花蓮の鼻を軽くつまんでやる。
「ふが」
 びくんと身体を震わせたあと、花蓮は目を開けた。
「ん……? あれ……もう朝議に行く時間ですか?」
 花蓮が目をこすりながら訊ねてくる。
「いや、朝議までにはまだ時間がある」
 半分寝ぼけた丸い眸で、花蓮は天綸を見つめた。
「……どうしたんですか、陛下」
「いや――おまえと出逢わずに過ごす日々の夢を見ていたのだ。あまりの悪夢に、うなされて起きてしまった」
「私のことを知らない陛下……? そんなのやだ」
 花蓮はくちびるを尖らせて天綸を睨む。そんな花蓮の反応が嬉しくて天綸は微笑んだ。
「ああ、私も厭だ。ひどくつまらない、何かが欠けたように感じる日々だった。あんな夢を見るのはもう真っ平だ。――しかし、おまえも私の夢ではなく、団子の夢を見ていたのではないか? 寝言を言っていたぞ」
「お団子の夢は見てましたけど――ちゃんと陛下もいましたよ! 一緒に巨大なお団子の早食い競争に挑む夢だったんです! ふたりのコンビで、世界選手権の決勝まで残ったんですよ!」
「世界選手権……? 色気のない夢だが、私も一緒だったというなら喜んでおこう」
 頭を撫でてやると、「特に呼ばなくても、夢に勝手に出てくるんですよ、陛下は」と花蓮は少し拗ねたように言った。そうしてから、小首を傾げる。
「まあ私の場合、後宮へ避難する作戦を思いつかなかったら、陛下と知り合うこともなかったと思いますけど――今となっては、陛下と出逢わずにいたら今頃どんな風に過ごしているのか、想像も出来ません」
 つぶやくような小声で花蓮は続ける。
「後宮へ上がらず、父様の決めた誰かと結婚させられていたか、後宮へ上がっても陛下と知り合う機会がなくて、今も梅花殿の隅っこで地味に暮らしていたか……」
 天綸は頭を振って花蓮の言葉を否定した。
「おまえが地味に暮らすことなど出来るものか。後宮へ上がりさえしていれば、あの初めて逢った時の暗殺未遂事件がなくとも、いずれ私はおまえの存在に気づいていただろう。――いや、違うな。おまえが城市で暮らしていても、私は必ずおまえと出逢っただろう。おまえが他の男のものになっていても、絶対に奪って私のものにした」
「私は陛下以外の人のものになったりしません……! や、陛下のものになったつもりもありませんけど。私は私のものですけど……!」
 むにゅむにゅと言い募る花蓮を、天綸は両腕で強く抱きしめた。
「ふぎゃっ……ちょっ、く、苦しいです陛下……っ」
 ――まったく、馬鹿な夢を見たものだ。
 この可愛い娘がいない世界など、野良犬にでもくれてしまえ――!

 

 そうしてその日の午後――。後宮の庭へ迷い込んできた犬に、
「もう私にあんな夢を見せてくれるなよ――!」
 そう語りかけ、厄払いのご馳走を振る舞ってから放した皇帝陛下だった。

〔おしまい〕

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